いつもなら笑いながら流す。
だけど、今は流せない。

中川が涙を流しながら、俺の目をまっすぐ見てるから…

だけど俺は生徒の気持ちには応えられない。


「…悪い。先生と生徒は…」

「恋愛禁止、でしょ?何回言ったら気が済むの?先生」


わかってんじゃん。


「なんでそんな規則ばかり気にするわけ?あたしは先生の気持ちを聞かせてほしい」


俺は馬鹿だな、と思った。

なんであんなに優しくしたんだろう。

なんで中川に気を持たせてしまったんだろう。


「俺は……」


"好きじゃない"
と続けようとしたとき…

ガタン

本が落ちる音がした。


ドアの方に目をやると、そこには口を開けて目を見開いた南がいた。

あきらかに戸惑っている。


「さてと、3年は教室もどれー」


俺は中川を軽く押した。


「瀬戸先生なんか…好きになるんじゃなかった…」


そう言って中川は走っていった。