「彼、怒ってると思う?」

 そんな戒に青年は口を開いた。

「! ああ……。どうだかな」

「まあゆっくり休んでよ、疲れたでしょ」

「そうさせてもらう」

 戒はそれだけ言うとコートを脱ぎながら壁に向かい、しゃがみ込んで背を預け腕を組み目を閉じた。

 真仁は投げ捨てられたコートを掴み上げ、

「お疲れさま」と小さく発して戒にかけてやる。

 敵を狙撃する集中力というのは、気力と体力をかなり消耗する。

 静かな寝息を立てている戒を労(ねぎら)うように、じっと見つめた。