「それは、ボクだけに埋め込まれているただ1つのコードだよ」

 戒を一瞥し、少し躊躇う言葉を切ったあと青年は暗闇に視線を向けた。

「ボクは、言わば人間とクローンの中間に位置する」

「どういうことだ」

 怪訝な表情を浮かべた戒に視線を合わせず青年は一度、目を閉じて語り始める。

「クローンが成功するとね、科学者というものはそこから造り出そうとするんだよ」

『天才』という人間を──

「ボクの祖父という位置にいた科学者は、優秀な人間から採取した細胞をさらに遺伝子操作し、クローンを作製した」

 話がまだ見えてこない戒をちらりと見て、再び闇に目を移す。