「げほっ、ごほっ」

 咳き込みながら、水貴の腕から吹き出す血を見やる。

「何、あの武器……」

 見た事の無いナイフに、翼はその光景を呆然と見つめた。

「き、きさま!」

 水貴は傷口を押さえながら、まだ痛みで地面に転がっている戒を睨み付けた。

 刃は動脈まで達したのだろう、流れる血の量と鮮やかな色からそれが見て取れた。

 それでも水貴は戒を殺そうと少しずつ歩み寄る。

 戒は立ち上がれないながらも、腰の背後からスローイングナイフ(投げ用ナイフ)を抜き水貴に放った。

「!? ぐあっ!」

 男の右目にそれは深々と突き刺さったが、その足は止まらない。