一端、間合いを離そうとした戒(カイ)に水貴(みずき)は素早く駆け寄った。

「!?」

「ざんねん」

 驚く戒にニヤけた顔を近づけ、腰に両腕を回して持ち上げる。

「!? うあっ!」

 ギリギリと締め上げる苦しみに歯を食いしばった。

「戒!」

「がっ……。あ──っ」

 ミシミシと骨のきしむ音が全身に伝わる。

「もっと楽しめると思ったが拍子抜けだ。背骨をへし折ってやる」

「やめろぉー!」

 必死に手を伸ばして翼は叫んだ。