青年は前につながれた男の腕の間に潜り込み、その胸に顔を埋(うず)めていた。 「戒に腕枕してもらうの初めてかも」 「……」 にこやかな翼に眉をひそめる。 「何を言っても無駄だからね」 戒の目を見て言い放つ。 「翼──っ」 決意の眼差しに、戒は言葉を詰まらせた。 「戒がいれば何もいらない。世界がどうなったって構わない」 青年は静かに目を閉じた。