「逃げようなんて思わないでね。こっから逃げるなんて無理なの解るよね」

「翼!」

 戒の呼び止める声には反応せず、筒井の後ろに続く。

「戒に触ったらだめだよ」

 無言で前を歩く筒井に翼は少し背中に睨みを利かせた。

「解っている」

 ボディチェックで何も持っていない事を確認している状態でわざわざ男に触ろうなどと思うものかと、筒井は眉を寄せる。