「翼!」

 戒は声を詰まらせ、無表情に見下ろす翼を見上げた。

「弟じゃなかったのか」

 目を伏せてつぶやく戒に鼻を鳴らす。

「全然、疑わないんだね。僕は戒の傍(そば)にいたかっただけ」

 例え弟としてでも構わない、戒の傍にいられればいい、離れるのだけは嫌だった。

「なのに、あいつは戒を呼び戻して僕から奪おうとした」

 折角、僕のモノになったのに! 怒りを露(あら)わにして拳を握りしめる。

 しかしすぐ、その表情を緩めて戒の前にしゃがみ込む。

 戒の太ももに頭を乗せ、恍惚とした。

「戒がいなくなれば真仁はおしまい。こっちには水貴(みずき)がいるからね」

「!?」

 その言葉にビクリと体を強ばらせた。