「クローンは禁止にすべきだ」という風潮(ふうちょう)が高まったのをきっかけに、日本は狂い始めた──

「その政治家は、国民の声を後ろ盾にしてクローン排除を訴えた」

 日本に存在しているクローンを全て殺処分し、作成途中のクローンも例外を問わず処分するという、暴挙とも言うべき発言を国会で繰り返した。

「全て!?」

 翼(つばさ)は息を呑んだ。

 日本にいるクローンは、ざっと数えただけでも数百万から数千万体いると言われている。

 戒の眉間にも深いしわが刻まれ、真仁の次の言葉を待った。