「翼、何故君が」

「……」

 翼は戸塚と目を合わせ、すぐに視線を外した。

 その青年のすぐ後ろにいる男──手錠で拘束されている戒は、苦い表情を浮かべ翼を黙って見下ろしていた。

「一体、何があったというのだ?」

 抱きしめたい衝動を必死に抑えるように両手を震わせる。

 翼は、問いかけた戸塚に向き直り小さく口を開いた。

「……真仁から逃げてきた」

「! 何故だね?」

 その言葉に喉の奥で舌打ちし、声を荒げる。