数歩、脚を進めて「走れ!」

 戒の声を合図にアスファルトを蹴った。

「!」

 駆け抜ける翼の視界に、大きな人影が横切った。

 水貴だ──その表情は少し驚いているようにも見えたが、足を止めずに遠ざかった。