日本、東京──男は暗い道を歩いていた。
膝下まである薄手の草色コートが、歩く度(たび)に裾(すそ)を揺らす。
夏が終わりを告げようとしている季節は、太陽が陰(かげ)るにつれて少しの肌寒さを呼び寄せる。
時刻は17時を少し回ったところだろうか、過去には深夜でも人通りの絶えなかった街は今や閑散として、荒んだ風景に微かな血の匂いがどこからともなく漂ってくる。
ぽつりぽつりと距離を空けて灯る街灯すら、申し訳なさげに周囲を照らす程度だ。
「止まれ!」
突然、怒鳴り声と共に男が現れた。
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