「田辺さん
 
 待っていた方が
 いらっしゃいましたよ?」

タナベ・・・

そんな名の女を、俺は知らない
彼女もまた、見知らぬ男の登場
に、とても驚いた表情を
浮かべた。

彼女は、可愛そうなほどに
疲れた顔をしている。

「あなたは
 神前組、の方ですか? 
 この度は
 ほんまに、あり、がとう

 命、助けて、もろて・・・」

震える声・・・

彼女の瞳から、流れる涙

手首に巻かれた包帯に
病院で目を覚ます事の
無かった妹・弓を
思い出す。

弓と、同じ傷・・・

彼女の手、指先が小刻み
に震えている。