入学式が終わり、教室へと戻った。

 もう、さっきのドキドキはない。
 やっぱりさっきのドキドキは、中学校生活が始まるからだったんだ。



 【咲月side】

 入学式で、担任の先生が自分のクラスの生徒の名前を呼ぶ。
 呼ばれたら、「はい」と返事して、その場に起立する。

 亮とはクラスが離れた。
 
「片岡亮」

「はい」

 亮の名前。亮の声。

 反応してしまう。
 いつになったら、好きじゃなくなるんだろう。
 私は、その日をずっと待っていた。

 しかし、1か月、2か月、3か月がたっても、その日はこなかった。

 そして、もう後期になった。
 前期は、亮と同じ委員会だった。
 後ろの席から、ずっと亮を見ていた。亮だけを。
 後期になったら、亮とは違う委員会になるのかな?

「会長やってくれる人いませんか?」
 無理。会長なんて、絶対に。
 誰も手を挙げない。
「じゃあ、副会長やってくれる人いませんか?」
 副会長か……。
 やってみようかな。内申上がると思うし。
 私は手を挙げた。
「じゃあ、石橋さん。あともう一人、誰か、やってくれる人」
 誰かが手を挙げた。
 松田真希。
「じゃあ、松田さん。副会長が2人とも女子なので、会長は男子です。男子で、誰かやってくれる人」
 
 それから5分、10分がたっても、手を挙げる人はいない。

「じゃあ、男子。教室の後ろで話し合って決めなさい」

 男子が教室の後ろに行く。