「速く返せよ。じゃないとバラすぞ」
 咲月は一瞬、寂しそうな目をした。
 俺はそれを見逃さなかった。
「はい」
 咲月は笑顔で返してくれたけど、目は笑ってなかった。
 俺……嫌われたのか?

「今日外練だよね?」
「うん」
 咲月に聞いた。
 でも、咲月は笑ってくれなかった。
 いつもなら、笑って返事してくれるのに……。
 咲月……怒ってるのかな?
 冗談で言っただけなのに……。
 
 なんか、ごめんな。
 俺は今でも、咲月が好きだよ。
 そんな寂しそうな顔すんなよ。
 俺は、咲月の笑顔が1番好きだ。
 だから、いつも笑顔でいろよ。笑ってくれよ。
 俺が……俺が、咲月のこと笑顔にしてやるよ。

 咲月はいつも隣にいる。
 近いのに、なんだか遠い。
 佐久間に協力してもらってるのに、意味ねぇじゃねぇか。
 咲月は、俺のことどう思ってんのかな?
 好きって思われてたら、すげぇ嬉しいよ。
 その好きの意味が、男としてでなくても。
 クラスメートとして、人間としてでも、俺は嬉しい。

 俺は、人間として、クラスメートとして、そして……女としても、咲月のこと好きだよ。