咲月を呼ぼうとする俺。
 だが、なかなか呼べない。
 いつもなら、普通に呼べるのに。

「咲月」

 やっと咲月を呼ぶことができた。
 「咲月」という一言が言えないなんて、今日の俺は、俺じゃない。

 咲月はこっちを見る。

 ――ドクン。
 ――ドクン。
 ――ドクン。

 優しくて、可愛い目。
 そんな目で、俺を見るな。

 えっと……。
 何話そうとしたんだっけ?
 咲月を呼ぶことに必死で、何を話そうとしたか忘れてしまった。

「あのさ、会長って何すんの?」
 何を話そうとしか忘れてしまったため、この言葉しか出てこなかった。
 咲月は少し考えてから、
「中央委員会と学年委員会にでるの」
 と言った。
 もちろん、そんなことは知っていた。
「中央委員会と学年委員会ってお前らもでんの?」
「中央委員会は会長がだけで、学年委員会は会長と副会長がでる」
 もちろん、このことも知っていた。
 ただ、咲月と少しでも長く話したかった。