世界でたった一人の存在 ―ラジエルの鍵― の器。
継承されしその力は今はどこへ行ったのか・・・。

―軍部・A塔―
中央から一番近い塔。それが軍部・A塔。
ここには見習い軍師が多くいる。
その中の一人、エリア=イルスは親友であるカーチェス=シーヌットと一緒に食堂に向かっていた。
「カーチェス。急げ!時間がなくなるぞ」
「ま・・・待ってぇ~」
「ホラ、早く」
ご飯を食べる時間も決まっている。
軍は時間には厳しいのだ。
「わー、やっぱり混んでるね」
「あそこどうだ?」
エリアの指差した方向はあまり人気のない場所だった。
「そーだね。今は席が空いているだけで幸運ってカンジだもんね」
二人はその席に向かって歩いた。
「お前は何食べる?」
「僕?僕は~」
エリアは はあ、と息を吐いた。
「お前は女の子なんだから僕とか言うなよ」
「だって仕方ないじゃない。昔からこうなんだから・・・」
カーチェスはむーっ!と言った。
「まあいいや。俺は何食べよう・・・」
「ハイハイッ!僕決まった。パスタがいいよ」
カーチェスが手を挙げて発言した。
「行かないのか?」
「えへへ~。エリアと一緒がいいの!」
そう言われると恥ずかしい。
「お前はどうして俺に懐いてくれるんだ?お前なら誰とだって上手くやっていけそうなのに・・」
「ん~?なんでだろ。一目ぼれってやつ?」
エリアは顔が真っ赤になった。
「お、おまっ!こんな公衆の面前で・・」
「前じゃないからいいの~」
エリアもパスタを食べることにした。
特に好きなわけでもないがなぜか食べたくなったのだ。

―???―
暗い部屋。光も差さないような暗い部屋。
「ラジエルの器が、現れた?」
「本当か?」
「確証はないけどね。勘のいい占い師がそう言ってた」
「ならば、早めに見つけないとな・・・」
四人の男の声がする。
「で、どこにいる?」
「分からない。でも、本当にラジエルの器なら神がここに導いてくれるはず・・・」

―夜 軍部廊下―
「今日の訓練たいへんだったな」
「そーだねっ!」
「お前はタフだな」
「よく言われる」
「嘘つくなよ」
カーチェスがエリア以外の人と話しているところを見たことがない。