残念だったなあ。

突然、そんな風に思った。
あんなに嬉しそうにして秀一もさることながら、心の中ではちょっぴりわくわくしていた自分も。
小学生の頃、遠足が雨で流れた時は確かにこんな気分になったものだ。

秀一は枕を抱えたまま眠っている。
それもそのはずで、今日はこの遠足の為に随分早起きをしたのに。

準備していた鞄の中からスケッチブックを取り出す。
えんぴつを構えて、考え直した。

今日は写生大会なんだから。

人のうちにまで来て熟睡している秀一の顔をスケッチしてやろう。
お昼までに完成させて、お昼になったら秀一を起こしてお弁当を一緒に食べよう。

自分の考えに一人で満足した晴彦は、机の引き出しを開けて、小学生らしく昔使ったクレヨンを探した。