「やはり、ただの風邪としか言えませんね。」

風邪、と目前の医師はそう告げた。

だが、「風邪」と言われて俺たちが納得がいくかと言われると、それはありえない。ありえる筈がない。

目前の医師もそれは解っているようで、目を閉じ小さく息をついた後…

「と、ここまでは状況を知らない人には言っている所なんですが…運が悪い事に、二人とも祥子ちゃんの事は知ってるみたいなんで、話す事は多いですね。」

そう言って、その医師は先輩に布団をかけた。

その姿を俺は医師と向かい合う形で見ていた。



バイトは休んだ。

と言うより、休みにされてしまった。

と言うのも…

-今は祥子ちゃんの側にいてあげな。この埋め合わせは来週のシフトに引き延ばしておくから今日はそこにいてあげなさい。-

と言うマスターのありがた迷惑なお言葉を電話越しに聞くことになったからだ。

俺は渋々それに従った。