ドクドクと波打つ鼓動がうるさい。わずか数秒間なはずなのにひどく長く感じられた。

「帰ったらだれもいなくて…てか荷物がほとんどなくて…冷蔵庫にこの紙が貼ってあった……」

海里の口から出た言葉は理解しがたいものだった。

震える手で差し出してきたのは一枚の紙切れ。しかもわたしが最近買ったディズニーのメモ用紙。

そんな可愛いキャラクター満載のメモには、そこに不釣り合いすぎるお母さんの達筆が並んでいた。

悠里、海里へ

おかえりなさい。

突然のことで驚いていることでしょう。急にお母さんだけ出ていってごめんね。

お母さん、もう限界なの。
お父さんと離れて暮らすのが辛くて…大阪に行きます。悠里と海里は学校があるから置いていくね。

二人でこの家は大きすぎるし無用心だから新しい家を借りておきました。地図と鍵はカウンターの上にあるからね。

明日には引っ越し業者が来るから必要な荷物はつめておくのよ。

じゃあね。
二人暮らしがんばって!


PS 早くお父さんに会いたいわ〜♪

お母さんより