角を曲がるとそんなに大きくない我が家が見えてきた。

単身赴任で大阪にいるお父さん、怒ると怖いけど優しいお母さん、やんちゃだけど可愛い弟。それにわたし。どこにでもいるごく普通の4人家族。

ん?玄関の前にだれかいる?

「海里(カイリ)!そんなとこでなにしてんの?!」

さきほど紹介した可愛い弟の海里が玄関先で体育座りをしていた。なによりも驚いたのは目に涙を浮かべていることだ。

普段は強がって反抗ばかりなのに捨てられた仔犬のような瞳でわたしを見ている。…少し母性をくすぐられた。

なんて冗談は半分にして。

「なにがあったの?いじめられた?」

「…母さんが……」

嫌な予感がする。
気丈な弟の泣き顔、絞り出した声。まさかお母さんの身になにかあったんじゃ…

「お母さんがどうしたの?」

弟の手前、必死で冷静を装うが背中に嫌な汗が流れる。終いには膝が震え出した。