混乱状態のわたしなんて眼中にないのか、それからこちらに目を向けることはなかった。
やまちゃんは黒板に転校生もとい中原くんの名を書いた。
- 中原 春樹 -
春樹って言うんだ。なんて言うか…名前までかっこいいな。
「中原春樹です」
彼はそう名乗ったあとぺこっと頭を下げた。その途端に教室は黄色い声で溢れかえった。
美少年と言う単語はこの人を表すためにあるかのようだ。
男に興味のないさえでさえ中原春樹から目を離せないでいた。
中原春樹が席につく。なんだかふわりといい匂いがした。って、わたしってば変態みたいじゃない。
新学期初日はあっという間に過ぎていき、帰宅の時間となった。
帰る用意をしている中原春樹のもとにはわらわらとクラス中の女子が集まってきた。わたしとさえを除いて。
「中原くん、彼女いるの?」
「……」
こんな感じで女子がいくら話しかけても中原春樹は口を一切開かなかった。それでも収まらない女子の質問攻め。
大変だなぁなんて思っていると、低い声が聞こえてきた。