ベランダの柵に両手を添え、何気なく下を覗き込んだときだった。 「………………え゛っ!?」 驚きのあまりがっちり柵を掴んだまま身を乗り出し、そこにいる人物を凝視した。 黒い髪が、わたしと同じように風に揺れてる。 自転車に跨ってこちらを見上げたまま、相手は動かない。 思いがけない出来事に硬直しているように見えた。