「…高橋桜、知ってる?」

「え?うん、まあ。隣の席だし。」

「隣?」

「うん。」

「なんかされた?」

「転校初日だからね、自己紹介されたよ。どうかした?」

「別に。…気を付けた方がいいかも。」

そう言う私をマスターは悲しげな顔で見ていた。

「梅ちゃん?そういえば、どうしてパーカーのフードかぶったままなの?」

痛いとこをつかれた。

「顔、見られたくないの。」

「ふぅん。そっか。あ、じいちゃん―――」

危なかった。

これ以上聞かれたらここに居られなくなるとこだった。

それだけは嫌だな。

唯一、安心できる場所だもん―――