ここで、終わらせたくない…
無意識にそう思った美里は、バッグから名刺をとりだし、聖に渡した。
「ありがとう、同じ夜の世界で、生きるんだし、仲良くしましょ?」
素直に言えない。
皮肉っぽく駆け引きのある言い方でしか、美里は男と話したことがない。
そんな自分をこのとき、初めて嫌いだと感じた。
高飛車で、嫌味な女…
最悪なイメージ
美里は自然と夜の世界で、演じることを覚え、素直なんて言葉は捨てていた。
むしろ、素直なんて言葉は自分の人生では無かったのではないか。
「マジっすか!?これお姉さんの本当のメアド?ってか!美里って、超有名キャバ嬢ってお姉さんっすか!?」
聖は目を見開きながら、名刺と美里を交互に見た。
そんな純粋な反応に自然と表情が緩む。