でも、そんなあたしにも一人だけ味方がいる。
「…お兄ちゃん…」
壁に寄りかかり夜空に呼びかける。
…あたしがまだ小学二年生の時、お兄ちゃんは家を出て行った。
中学三年生だったお兄ちゃんは、まだ小さいあたしに、ケータイの電話番号とメールアドレスを「お母さんには見せないで」と言って渡し、お兄ちゃんが大好きなあたしは、大きく、何度も、「うん!」と頷いた。
ケータイを買って貰ってから、あたしは他の設定そっちのけでお兄ちゃんに連絡した。
電話のコール音が妙に大きく聞こえて、ドキドキしながらお兄ちゃんが電話に出るのを待った。
すぐに電話に出たお兄ちゃんは、『麗か?』と、あたしの「もしもし」を聞いただけで分かってくれて…
居場所などは聞かない。
お兄ちゃんが無事に生きていてくれればそれでいいから。
そうして、お兄ちゃんとは月に二、三回は連絡を取っていた。