「…もう夕方か………」


夕日に照らされた海は、あの時夢月と見た海と同じだった。


『…知ってる?手が冷たい人は心が温かいんだって。だから、蓮さんは利益や欲だけを考えて生きているような冷たい人間にはならないよ』


…夢月、お前の手は温かい。それでも心は温かい。夢月は日だまりみたいに全てが温かい。


『…狼牙の人達があんなに仲良くて、仲間を思えるのは蓮さんが総長だからだよ。蓮さんがいたから…みんなついてきたの。不器用だけど優しくて…誰よりも辛い思いをしてきたからこそ…蓮さんは優しい蓮さんのままだよ。何があっても変わらない』


こんな俺を…お前は優しいと言った。運命を呪っていた俺を夢月は簡単に救ってしまった。


『…蓮さんの居場所は蓮さんのいたい所だよ。自由になりたいなら…逃げちゃえばいいんだから!自分の人生は、他人が決めた人生じゃないよ』


俺の望むようにすれば良いのだと教えてくれた。


いつだってお前は、俺を導いてくれた。だからか…時々思う事があった。夢月は神様が与えてくれた天使だったのではないかと…。


砂浜を歩く。凸凹もなく、柔らかな砂は足に優しい。まるでクッションのようだ。


「…あれか………」


海に沿って砂浜を歩いていると、砂浜にぽつんとある岩の下の方に手紙があった。