「…行くな……行くな!!」

―バサバサバサッ

気づいたら全身びっしょりと汗をかいていた。

空を切った手は伸ばしたままで、頬には涙が伝っていた。


「…夢……か…?」

幸せで…悲しい夢だった。幸せだからこそ悲しい。そんな事を夢月と出会った間もない頃に夢月が言っていた気がする。


今ならわかる…幸せだからこそ悲しい理由が…。

最近、心にぽっかり穴が開いたようだった。


目を覚ませばいつも、傍にいたあいつはもういない。

「…夢月………」


何度名前を呼んだだろう。決して返事は返ってこない。でもいつか…返ってくるんじゃないか…そう願って…。