「…だから…高校の時から自由に生きた。好きな高校へ行って、暴走族入って、総長になって……あいつらと出会った…。初めてだよ…利益や欲を考えない人間と出会ったのは…」


狼牙の仲間の事を考えているんだろう。蓮さんは笑顔を浮かべていた。


「…でも…あいつらと過ごせる時間も…残り少ない。あと数ヶ月もすればまた、あの息苦しい世界に戻らなきゃいけない」

「………蓮さん……」

「…あの世界に戻ったら…俺自身もそうなっていくんだろうな」


寂しそうに呟く蓮さん。あたしに…何か出来る事はないのだろうか。生きている間に、蓮さんにしてあげられる事……。


「………蓮さん……」


蓮さんの左手を自分の両手で握りしめる。蓮さんの手は、やっぱり冷たい。


「…知ってる?手が冷たい人は心が温かいんだって。だから、蓮さんは利益や欲だけを考えて生きているような冷たい人間にはならないよ」


「…それは…」

「…狼牙の人達があんなに仲良くて、仲間を思えるのは蓮さんが総長だからだよ。蓮さんがいたから…みんなついてきたの。不器用だけど優しくて…誰よりも辛い思いをしてきたからこそ…蓮さんは優しい蓮さんのままだよ。何があっても変わらない」


「……俺は…そんな優しい人間じゃない。変わらないなんて言い切れないだろ。人はいつか変わる。時間が経てば経つほど…」