取り出したのは、同じ様にオレンジのいい匂いがするであろうパッケージの、リップクリーム。キャップを外すと、春風が素早く私の唇に塗りたくった。


「唇も、荒れてるよ?もー、女の子なのに。ちゃんとケアしなよね」


春風のポケットから出てきたと言うことは、これは間接キスじゃないか……!


私が手の甲で唇を抑えて仰け反ると、春風は例の男の顔で、ニヤリと笑う。


「間接キスくらいで今更照れてんの?」


「なっ!?まさか、ハワイの時の……テメッ!」


こいつ、覚えてて、忘れたふりしてやがったな!確信犯め!やっぱり曲者だ。


「さーね、どしたの?何のことやら。ハワイで何かあった?あははー」


チックショウ、男匂わしバージョンの春風には、どう頑張っても勝てる気がしない。