部屋がごみ屋敷並みにぐっちぐちゃになり、やっとパスポートが見つかった頃。


「ひーなーこー、オトンいじけてんだけど……ってなな、なにこの惨劇!ドロボー!?倒したよね?屍はどこに埋まってんの!?」


「煩いよ影兄!探しもんしてただけだっての!」


スタジオ帰りの影兄が私の部屋の惨劇を見てでかい声をあげる。


そして、私の手に握られたパスポートを見て、目を輝かす。


「海外旅行でも行くの?壮君達と?」


夏は『皆川君』と呼んでたはずだが、いつのまにか『壮君』に変わってやがる。


性格全然違うのに、どんどん仲良くなってくな。ドSとドMの組み合わせで相性いいのか。


「会長一人に誘われたんだ。珍しいよな、二人だけなんて」


それを伝えると、影兄はニマーっと笑う。心底ウザい顔だ。一発回し蹴りでも食らわしてやろうか。


「壮君、甘々を、ついに甘々を求めたな」


「鼻の下伸びてるよ影兄、マジキモ」


ウザい影兄の言っている意味は分からんが、何がともあれ、楽しみだ、海外!