私の土俵のはずなのに、ちーっとも勝てる気がしねぇ。


「あの陽菜子ちゃんが相手にならないなんて……彼は何者?」


ギャラリーの誰かが呟く。それが嫌に耳について、短気な私は舌打ちを小さく打った。


「テメェの土俵はこんなもんか、ひよこ?」


余裕しゃくしゃく……って目ではない、結構本気の、修羅の香りを覗かせる瞳の皆川会長は、声だけは余裕そうにそう言ってくる。


「皆川会長も結構甘ちゃんだね。私がただ攻撃してるとでも、思ってんの?……なんつって」


ムカつくから、私も言葉だけは余裕しゃくしゃくに返す。


ホントは考えてる余裕もないくらいにしんどくて、諦めそうな気持ちを奮い立たせてこの場に立ってるのに、笑えるよ。