「まさかここまで言わせといて、意味分かんないとか言わないよね、ひーちゃん。気付いてるんじゃないの?」


「わ、分かん、ねーよ」


その男の顔をした春風が、じり、じりと私に迫って来る。


私としたことが、固まってしまったらしく、ふわり、と春風のシトラス風のしつこくない香りが顔に近づく。


春風なんか鍛えたところでまだまだザコなんだ。逃げることだって、ぶっ飛ばすことだって容易いはずなのに。それでも、私は動けない。


条件反射でぎゅ、と瞼を閉じるとその瞼の上に柔らかくて暖かい物がぶつかった。


まさか、こ、これって、き、きききき……!?


ガバッと目を開くと、眼前にはやけに成長した春風の顔。