影兄が私の浴衣の着付けの仕上がりに満足してニヤニヤしているうちに、軽快なチャイムの音が鳴り響く。


「お！暴力姫、皇帝閣下の迎えが来たぞ？」


「テメェ暴力は余計なんだよ」


脚が効かない私は、代わりに全力でゲンコツをかますと痛がる影兄を無視して歩き出す。


ドアをガチャリ、と開けると、そこには蓮の刺繍がされた浴衣姿の皆川会長がいた。


「おおっふ……実に見事に美しく着こなしていらっしゃる。普段着のようにしっくり来てるのは何故だ」


「お前も……まぁ、いいんじゃね？」


私が皆川会長を褒めると、意外と皆川会長も好感な答えを返して来る。しかも、いつも迷いのない目をしてるのに、今は泳がせた目を眼鏡をかけ直す仕草で必死に隠している。


え、何コレヤダ。いつもと違うじゃんよ！調子狂う！