…………般若。正に、能の世界の般若のように、美しくて、恐ろしかった。
皆川会長は息を呑む程に身軽に、音も立てずに不良達を薙ぎ倒している。
表情は本当に能面みたい。何色でもない。何も滲んでない。悦も、負も、そんなものこの美しい生き物にはいらない感情なんじゃないかと思えた。
特に、目が怖い、と思った。この私が……人を怖がっている。本気で怖がっている。対峙したわけでもないのに、だ。
分かることと言えば、皆川壮平という男は狂おしい程美しい。ただそれだけだ。
「壮平は、あれは俺達程甘くないよ。ひよこ、殺されたくないなら黙って見てな」
ゴールデンウィークの時に二人だって相当だったのに、皆川会長はそれを軽く超えるほどの狂気を持っている。