「あいつらの狂気は、お前が今のままである限り、お前を本当の意味で傷付けたりしない」


その一言が、さっきまでの私の恐怖心を取り除く。不思議だ。会長は魔法使いなのかもしれない。


「はーあ、会長、あんた、相当モテるね」


「なんだ今頃気付いたか。お前の目は節穴だな」


そんなやり取り、普通抱きしめられながらするもんなんか。甘い関係なんかでは決してないし、良いのかもしれない。


「午後からもトレーニングだから、それまでに青痣なんとかしやがれ。バカひよこ」


絶対無理だし。鬼か!いや、鬼だな、うん。今更だ、そんなこと。


皆川会長は私をお姫様抱っこってやつで私を軽々持ち上げると、いつも通りの高慢な笑みを浮かべていた。


「仕方ないから運んでやるよ、感謝しな」


この優しさがいつもあるといいんだけど。それは多分、この先も叶わぬ願いだろう。