お互いに黙ったまま歩いて行く。

…あ、そうだ。

仁が教えてくれなかったから本人に聞こう。

「教えてくれないだろうけどな」とは言ってたけど…まぁ聞いてみるだけ聞いてみよう。


「ねぇ、柊也」

「何?」

「もう半年経ってるし、一生来ないって言ってたのにどうしてまだ部活に来てくれてるの?」

「……嫌なのか?俺が行くと」

「嫌じゃないよっ!むしろ…」


むしろ……なんだろう。

自分で言おうとしたのにわからなくなった。

嬉しい、のかな。

でもどうしてそう思うのかはわからないまま。


「むしろなんだよ」

「むしろ……なんでもない。とりあえず、嫌じゃないよ」

「そ。それなら別にどうだっていいだろ」


確かに理由がないと居ちゃいけない、なんてないし。

でも気になるんだよね。

あんなに「辞めたい」だの「行かない」だの言ってたのに。


「……お前がしんぱ」

「わんわんっ!!」


柊也が何かを言おうとしたけど、突然現れた犬に遮られた。


「あぁぁあ…いい、いいっい犬っ……!!」

「こらっ…抱きつくなっ!バカ」

「だだだだっだってっっ…襲われるっ噛まれるっ!!」

「襲われねぇし、噛まれねぇよ」

「すーちゃんー!!待ちなさーいっ!!」


向こう側から走ってくる女の子。

よく見ると、犬には首輪が付けられていて、そこから長いリードで繋がれていた。

良かった…リードで繋がれてる分、少し安心した。


「ってうわっ!…ご、ごめんっ柊也……!!」

「あ、あぁ」


抱きついちゃってた……全然気づかなかった。

重症だね、私…。