「えー?こんなに色々やってあげたのに、ジュースなのー?」

冗談っぽく言った。

「じゃあ静岡にちなんで、お茶。お茶しに行こか」

「あはは、何時代のナンパですか?」

「大阪、ひっかけ橋で鍛えました!」

「何それ?」

「知らん?大阪ミナミにあるねん。別名ナンパ橋。正式名称は戎橋」

「そんなのあるんだ。何?仲原君、ナンパなんてするの?」

「あはは、ひっかけ橋で鍛えたってのはウソやわ。俺、京都出身やし」

「あッ、ウソついた!関西人はウソつかないんじゃないの?」

あ、今朝のノートチャットを思い出した。

「あ、いや、冗談や」

「まただ。けど今度は、自分でウソって言ったもん」

「かなわんなぁ。参りました」

吉倉さんは、ニコッと笑って言った。

「ヨシッ、じゃあお茶でもおごってもらいますか」

「はいはい」

「私、この近くにいい喫茶店知ってるんだけど」

喫茶店ッ。
缶じゃないんだ!

俺は財布をポケットから取りだし、小銭を数えた。

札は入ってない。
そして苦笑い。

「あはは、まぁ、うん。多分大丈夫やわ」

「ヤッタ!ゴチになりまーす」




家に帰り、寝る前に今日の出来事を思い出した。
そして、プッと思い出し笑いに浸る。

よく食べる子だったなぁ。

喫茶店に行き、吉倉さんはケーキとエクレアとパフェをペロリと食い尽くした。
まだ昼飯から3時間くらいしか経っていないのに。

もちろん、そんなにおごる金は持っていない。

結局、割り勘。自分の分だけ払うことになった。

また今度、何かおごらないとなぁ…。

ふと、吉倉さんのことばかり考えていることに気付く。

あれ?
何?
いやいや、今日会ったばっかじゃん!

「アホらし。寝よ」

そう呟き、布団を被る。

…ダメだ。
寝られない!
何で!?
まさか、恋したっての!?
たった1日で!?

確かに吉倉さんは可愛いよ、
性格もいいはず。
でも、こんなの一目惚れみたいじゃん!

吉倉さんを初めて見た時を思い出した。

俺の机に自分の机を引っ付けた吉倉さんを見た時、ドキッとした俺…。

「一目惚れしたかな…」