女だけの軽音か…。
そう言えば、この学校って、男が少ないような気がする。

「吉倉さん、この学校、男、少なない?」

「ん?少ないよ。4分の3は女だもん」

「え!?そんなに男少ないん?なんで??」

「何でだろうね。あ、でも私らの代だけだよ。上も下も、男女半分くらいだもん」

「あ、3年と1年は普通に半々なんや。へぇ、不思議やね」

「うん。学校の七不思議の一つ」

どうせ、七つもないだろうに…。

「で?」

吉倉さんが、単音だけでいきなり、質問してきた。

「え?」

もちろん聞き返す。

「軽音に入ってくれるの?」

断り辛いから折角話をすり替えたのに、元に戻された。

半日だけど、世話になってるし…。

「考えとくわ」

…ということにしておいた。



そして5限目6限目と終わり、ただ今帰宅中。
ってか俺、迷子中。

いったい俺の家はどこにあるの?

家から学校までは、お母さんが付いてきた。

歩いて20分くらいだったんだけどなぁ…。

周りをキョロキョロする。

すると、角を曲がった先に学校の制服を来た女の子が歩いていた。

ラッキー!
住所は分かるから道案内してもらお。

小走りで女の子に近付く。

「ちょい、ごめん」

女の子は少し周りを見て、振り返った。

振り返った子は、吉倉さんだった。

「あ、仲原君」

「あ、吉倉さんやん!あれ?軽音は?」

「今日は休みだよ」

「あ、そうなんや。丁度良かった。俺、アホみたいに道に迷ってもうてん。自分んちが分からんようになってしもうたんやわ」

吉倉さんがプッと笑う。
気にせず続けた。

「ちょっとごめんやねんけどさ、この住所見て、どの辺か分かる?」

俺はそう言って、ケータイを見せた。ケータイには、忘れないように住所が打ってある。

「あ、分かるよ。ってか、私の家から近いじゃん」

「え?マジで!じゃあ道案内よろしくッ!」

そう言って、俺は敬礼した。

「しょーがないね。付いてってあげる」

「サンキュッ!ジュースでもおごるわ!」