カミツグ!!〜The six elements.〜


よし、飯にするか。

腹が減る。
それが俺が生きている証拠。

俺は路地裏から朝日を浴びに、外の道へと足を出した。

「?!」

道に出る寸前、俺の目の前に一人の男が倒れた。

ドサッ

だっ誰だ?!

そいつは血だらけで、息も絶え絶えだ。

ヤベェ。早く治療しねぇと。
だけど…こいつをやったのは誰なんだ?

俺は顔だけを外に出す。
眩しさに顔を歪ませつつ、辺りを見回した。

「…誰も…いねぇのか…」

だが、人一人居なかった。

「ぐ…うぅ…」

「うぉっ…お前、大丈夫か?!」

「う…く…」

「よし、俺が助けてやっから……キュア!!」

ボウンと『field』(フィールド)が出て、俺は目一杯力を出す。

さっき自分の傷治すんじゃなかったなぁ…と、しみじみ思いつつ(笑)




スゥッと傷が治っていく。
内臓がやられてるみたいだから、内臓の傷に専念したため、顔や腕表面の傷は後回しだな。

『spell』(スペル)の効きがわりぃな。

人のための力を、自分に使った報いかな。
いやでも、こいつは絶対治さねぇと…意地でもな。

フシューッと手から煙が出てくる。オーバーヒートか、おい!!

「だがな…俺には、これしかねーしなぁ!!ダブル!!」

俺は無理を承知で治療魔法を倍増した。

助かれよ…お前!!

――…
―――…
――――…




「く…はぁっはぁ…」

玉のような汗をかき、俺は治療を終わらせた。

そいつはスースー寝息立てて寝ている。

よし。
俺でも少しは役に立てたかな。

「じゃあな、これで大丈夫だ」

俺はそいつに別れを告げ、腹の足しになる物を探しに町へと歩いた。

「く……」

ダメだ。ヤベェ。
魔力が…尽きてる。

ザザッ

「?!」

霞む目の前に、何かが現れた。
何かわからねぇ…クソ。敵かもしれねーのに、さっきの不良か、あの俺が助けた男をやった奴かもしれねーのに…

「く…そ…誰…だ…」

ドサッ…

意識が遠退いて行く…
あぁ…死ぬのかもしんねーな。
俺ってば18で死ぬのかよ、おい。
はぁ…超短けぇんだけど…




ブキャウギュウ!!

「ん……」

…な…何だ?

ブキャウギュギュ…フシュッ!!

何か汚い声が聞こえる。
ヤベェ…超うるせぇ。

俺はゆっくりと目を開ける。

「…は?」

ここ、どこだよ。

俺は白いベッドに寝ていた。
全てが白の部屋…に、派手な色した鳥が一匹。

「ブキャウギュウギュッ!!」

「うおっ…なっ何だよお前!!」

その鳥が俺に気付いたのか、突進してきた。

「ブキュウッ」

不細工な鳴き声だな…

「お目覚めになられましたか」

「あぁ…ってはぁ?!」

何故か声が聞こえた。

「何か?」

「いや…鳥が喋ってるから…」

「あぁ、この鳥の心と自分の心を『trade』(トレード)しただけです。私は人です」

「交換したのか?!」





「はい。私は精神魔法を使いますので。自分は今頃飛び回っているかもしれませんが」

それは嫌だな。
イっちゃってる人だと思われるだろ。

「まぁ、それはいいとして…今すぐ、あなたを校長室に案内します」

「Why?」

「ここは、魔法学校。通称『SPELLSCHOOL』ですから」

す…スペルスクール…?

「何だそれ…」

「ここは、魔界ですから」

「まっ魔界?!」

それ、ファンタジーの世界だろ?!

「はい。実在するのですよ。実在するから、あなたは今ここに居る」

「な…!!俺…が、魔法を使えるから?」

「えぇ。その通りです」




「なっ…何で今頃っ…」

「はい?」

「俺の家は、代々治癒魔法を継いでいく家系だ。だが、俺の祖先に魔界に連れて行かれた奴なんかいねぇぞ」

「は?いや、まさか。そんなことありえません。何らかの理由で魔法を使えるようになった人間は、この魔界に連れて来られます。だからそんな…魔法を受け継いで行くなんてことは……」

「ありえないとは言えんじゃろうなぁ…実際こ奴がそれなのじゃから」

「「?!」」

「校長!!」

「校長??」

突然入って来たこのジジィが?!

「ジジィとは、結構失礼な坊主じゃなぁ…」

「ジジィ?!何てことをっ」

「あん?ジジィじゃねーか」

「このSPELLSCHOOLの…魔界を仕切るかたですよ?!」





「へぇ…つーかこのジジィ、心の声が聞こえるのか?」

「ははっ…坊主がフィルターかけてねぇからじゃよ。そこから教えないかんよーじゃな」

「フィルター?」

「ほれリョク、教えてやれ」

「はっはい…えーフィルターとは、心の考えを読まれるのを防ぐ物です。魔界の住人は、まず始めに親からフィルターをかけることを習います」

「へぇ…あ、俺、治癒魔法以外使えねぇぞ?」

「ハッハッハそんなわけは無い。坊主は、自分でそうしているだけじゃよ」

「は…はぁ?」

俺は今まで、自分で自分の伸びる力をセーブしてたってことか?

「無意識に…か?」

「あぁ。潜在意識がそうしていたまでのことじゃ。ということは、潜在意識を刺激すればいいのじゃよ。他の魔法を覚えるには、坊主にはそれが手っ取り早いのじゃ」





「へぇ…いいこと聞いたな」

「ほぅ。では坊主にはこのSPELLSCHOOLに入ってもらおうか」

「は?ヤダ」

「なっ…何て言いかたをされるのですか…!!」

リョク?とか言われてた奴は、すげぇ慌ててる。

「だって俺、人間だし」

「魔法を使える者は、もう人間とは言えません!!」

「お前らだって人間だろ」

「私は人間ではなく、魔人です」

「マビト…?小人の親戚かなんかか?」

「ちっ違います!魔界の住人、略して魔人です」

「ふーん。まぁ、人だろ、人。つーわけで俺は、人間達が居る世界に帰ります」

「ほーう。どうやってじゃ?」

「はぁ?どーって…」




どうやるもこうやるも…分かんねぇ!!
何だ俺、計画性無しじゃねーかっ!!

「では、魔界の魔法学校に入らない奴は…処分せねばならん」

「はぁ?!」

何だそれっ!大人の事情かなんかか?!

「大人の事情とかそういう問題じゃのーて。坊主の力を悪に利用されては困るのでな」

「はぁ?!治癒魔法を理由して何になんだよ!!」

「エンドレスに悪い奴らが復活しては困りますから…というわけですか?校長」

「そうじゃ。では」

サッとジジィが手を挙げると、槍を持って武装した兵士軍団が現れた。

おっおい、これマジヤベェんじゃねぇの?!

「やるのじゃ」

「「「「「は!!」」」」」

"は!!"じゃねーよ!!

どうする俺、どうするっ俺ぇえええ!!!