カミツグ!!〜The six elements.〜


ボウン

「へ?フィールド?です?」

何故か突然マル達の足元に、フィールドが現れる。
マルは何もしてないはず…(汗)

ということは…!?どういうことです!?

「そーさまほー!!すりーでぃめんしょなるぴくちゃー!!」

ぐにゃん…ぽよぽよぽよっ

「うーがおっ!!がおがお!!」

……へ?ま、魔法?
せ、セーちゃんが…魔法を使ったですか…?!

『three dimensional picture』(スリー ディメンショナル ピクチャー)
実体化の操作魔法。
実体のないものを実体化し、立体的に表すことの出来る魔法。
ピクチャーだと絵からとなる。

「セルねー?そーさまほーが得意になったの!!」

…すごい才能だ…
だってセーちゃんはまだ八歳。
なのにもう綺麗に魔法が使えるなんて…
お姉ちゃん、泣いていいです…?(泣)




「マリスねぇや、最近元気なかったでしょ?これで元気元気になった??」

…セーちゃんにまで気付かれるくらいに、悩んだ顔してたんだ…マル。

たとえ、セーちゃんの命の恩人だとしても…キジィーム様が悪いかたなのはこの一件でよく分かった。
もう、それで良いんじゃないかな?
マルは、マルの思った通りに動かなきゃダメなんじゃないかな?

…数年前のあの日、マルと森ではぐれたセーちゃんがモンスターに襲われたとき…助けてくれ、マルと引き合わせてくれたことは…とても感謝してる。
マルの、大事な大事な弟だったから。

でも…やっぱり、それとこれとは話が別なんじゃないかな?

…そう言えばキジィーム様は、ここ数年で急激に雰囲気が変わられた気がする。
セーちゃんを助けてくれたときの面影と、今の姿は何故か…釣り合わないような気がしてならない。

どうして…?





「……ねぇや…!!マリスねぇやってばぁ!!」

あっ!!いけない!!
セーちゃんを無視する形になってた!!

「す、すみませんセーちゃん…(汗)ねぇや、少し考えごとをしてましたです。でも、セーちゃんの魔法を見て元気出たです♪ありがとうございます、セーちゃん♪」

マルはそう言い、ふわふわしたセーちゃんの頭を撫でた。
照れたようにギュッと口と目を結ぶセーちゃんは、マルの心を和ませる。

「セーちゃん」

マルはセーちゃんの名前を呼びながら屈み、グイッと近付いた。

「なぁに?マリスねぇや♪」

セーちゃんはご機嫌なのか、ニコニコしている。

セーちゃんに、これだけは言っておこうと、マルは口を開いた。

「ねぇやはですね?戦いに行かなきゃならないんです。もうじき…。…あと少しで、おっきーな怪物さんと戦いますです!!」

「?おっきーな怪物さん…?」

「はいです。それはもー恐ろしいです!!」




しかめっつらでセーちゃんを見つめると、

「す…すごーいっ!!マリスねぇやっ!!かっちょいー♪」

セーちゃんは目を輝かせて嬉しそうに叫んだ。

「そーなんです!!ねぇや、実は恰好良いんです!!」

それを見てちょっと得意げな顔をすると、セーちゃんはもっと嬉しそうな顔をした。

「そんなこわーい怪物さんなら、みーんなの敵だね!!その怪物さんをやっつけに行くマリスねぇやは、勇者さんだ!!」

…少し、救われた。
恐い怪物は、皆の敵だと。
その皆の敵を倒しに行くマルは、勇者だと言う言葉に。

「ありがとーです、セーちゃん」

マルは目頭が熱くなるのを感じながら、セーちゃんの頭をなでなでした。

もっと強くなる為に、マルは…キジィーム様を倒す。

大切な人が敵になるなんて悲しいけど、恐い怪物になったのなら、マルは命懸けで倒す。
決めたことは絶対に曲げない。
マルは…頑固ですから。



END




「よし…着いたな、魔界」

親父とお袋に顔を見せ、話しもしたので、俺はこっちに戻って来た。

皆は…きっと自分に出来ることを一心不乱にやっているはずだ。
俺も…出来ることをしなければ。

「ギュフギュフッ!!」

…ん?アードリー?
アードリーが妙に反応してる。
何かあんのか…?

「…坊主。久しぶりじゃな」

この声…!!

「じ、ジジィ!?」

「フハハハハッ酷い言われ様じゃのぉ…」

ザビルスのジジィだ!!
キジィームの…息子…
少し、警戒してしまう俺。
もろバレるだろこれ…(汗)

「肩の力を抜かんか。坊主に、話したいことがあるんじゃ。着いてこい」

…ま、マジかよ…直球…
つーかジジィって、俺達にとって敵なのか?味方なのか?
…曖昧過ぎる…(汗)




ジャリッ

砂を擦るような足音が聞こえ、俺が振り返ると、リョクが居た。

「あれ…リョク?」

久しぶり…だけど。
どうしてここに?

「ケイシ、ザビルス校長は、私達の味方です」

「…!!」

…そ、そうか。
リョクはジジィに一番近い存在だ。
確か、秘書のようなことをやっていると聞いたような気がする。
多分…(笑)

…だから、ジジィが味方だと断言出来るわけだな。

「…坊主、ここじゃいかん。ワシの部屋で話そう。全てを」

…全てを、だと?
どういうことだ?ジジィも…キジィームに苦しめられてんのか?

ジジィも…キジィームを倒したいって思ってんのか?

俺は、無意識に眉を寄せていた。




バタンッ

豪華で重たそうなドアがゆっくりと閉まった。

俺は、ジジィの部屋、つまり校長室に居る。

校長室に一つだけある机と椅子に腰掛けたジジィは、俺の足元に広がる円のような模様が入っている床に向かって、

「ほれ、椅子、出てこんか」

杖を突き出した。

にゅっ

「うっわぁ!!ま、マジで椅子が…!!」

そして床から、本当に椅子がゆっくりと出てきた。

や、やべぇ…こんなことも出来んのか。
やっぱジジィって…すげぇ奴なんだな。

「坊主、そこに座るのじゃ。リョクは、ワシの隣に控えていてくれ」

「…御意」

俺はジジィに言われた通り、その椅子に座った。





「とりあえず…ここを異空間に飛ばすかの」

「は?!」

「校長、ここは安全だと思うので…そのようなことせずとも大丈夫だと思いますが…」

いやいや、この人サラッと"異空間に飛ばす"とか言ったんですけど!?
目からウロコなんですけど!?

「ハッハッハ。坊主、その呆けた面はなんじゃ(笑)」

「いや…普通に考えて呆けるだろ…(汗)」

ジジィの魔力は底抜けか!?

「ホッホッホ…まぁ、結界を二重に張っておいたから問題無しじゃろ(笑)」

結界を二重…!?
底無しの体力だな、おい…(汗)

「さてと…では、何処から話すかのぉ…」

長いヒゲを触りながら、ジジィは少しの間考え込むように空を見た。




「まず、ワシと魔界の裏のイーヴルマナク…ガルディは兄弟じゃ」

イーヴルマナクの本名は、ガルディって言うのか。
恰好いいな、意外に(笑)

「あぁ。知ってるけど」

兄弟ってことはな。
イーヴルマナクが弟だろ?

「口は挟まんでいい。聞いておくのじゃ、静かに」

…それもそうだな。
黙っておくことにしよう。

「ワシとイーヴ…いや、ガルディの違いに、お主は気付いたか?」

…違い?ダンディさとか?

いや、まてよ…、若さ…?確かイーヴルマナクは、ジジィと二歳違いだと言っていた。
それなのにこのジジィの老け方は尋常じゃねぇ。
本当は40なのに、80にしか見えねぇもん。

もしかして…

「気付いとったようじゃな。…そう」