カミツグ!!〜The six elements.〜


クソったれ…!!

俺は自分の右腕の傷を、左手で治していた。

俺の名は、

神家 契嗣(カミヤ ケイシ)

今、路地裏近くに居た不良と戦闘し…やられた。

クソっ…!!何で負けんだ!!

素手でぶつかって…でもやっぱり負ける。
だいたい何で挑みに行ってるかさえも、自分では分からない。
何でなんだよ…

ドンッ

怒りは手から壁へと向かう。

不良は俺を散々ボコッた。
…が、俺は明日には傷すら無い。

なぜなら…俺は治癒魔法を使っているから。

だが俺は、治癒魔法以外使えない。

こんな俺に、腹が立つ。
何で戦闘魔法を身につけることが出来ねぇんだ!!




治癒魔法…『cure』(キュア)は、神家家に代々伝わる魔法だ。
俺だってその証を受け継いだ。

だが俺は、他の魔法を身につけ、世のため人のために尽くしたい。

…治癒魔法だけじゃ…何の役にも立てやしない。
治癒じゃ、その人が怪我する前に救うことが出来ない。
怪我をした前提で行う魔法だから。

俺は弱い…

「クソ…!!」

修行という理由を付け、俺は家を出て、この路地裏で暮らしている。

ひっそりと…ひっそりと。

ぐるゅるゅぅ〜

「フハッ…」

腹は減るんだよな。
治癒魔法使っただけでこれだ。






よし、飯にするか。

腹が減る。
それが俺が生きている証拠。

俺は路地裏から朝日を浴びに、外の道へと足を出した。

「?!」

道に出る寸前、俺の目の前に一人の男が倒れた。

ドサッ

だっ誰だ?!

そいつは血だらけで、息も絶え絶えだ。

ヤベェ。早く治療しねぇと。
だけど…こいつをやったのは誰なんだ?

俺は顔だけを外に出す。
眩しさに顔を歪ませつつ、辺りを見回した。

「…誰も…いねぇのか…」

だが、人一人居なかった。

「ぐ…うぅ…」

「うぉっ…お前、大丈夫か?!」

「う…く…」

「よし、俺が助けてやっから……キュア!!」

ボウンと『field』(フィールド)が出て、俺は目一杯力を出す。

さっき自分の傷治すんじゃなかったなぁ…と、しみじみ思いつつ(笑)




スゥッと傷が治っていく。
内臓がやられてるみたいだから、内臓の傷に専念したため、顔や腕表面の傷は後回しだな。

『spell』(スペル)の効きがわりぃな。

人のための力を、自分に使った報いかな。
いやでも、こいつは絶対治さねぇと…意地でもな。

フシューッと手から煙が出てくる。オーバーヒートか、おい!!

「だがな…俺には、これしかねーしなぁ!!ダブル!!」

俺は無理を承知で治療魔法を倍増した。

助かれよ…お前!!

――…
―――…
――――…




「く…はぁっはぁ…」

玉のような汗をかき、俺は治療を終わらせた。

そいつはスースー寝息立てて寝ている。

よし。
俺でも少しは役に立てたかな。

「じゃあな、これで大丈夫だ」

俺はそいつに別れを告げ、腹の足しになる物を探しに町へと歩いた。

「く……」

ダメだ。ヤベェ。
魔力が…尽きてる。

ザザッ

「?!」

霞む目の前に、何かが現れた。
何かわからねぇ…クソ。敵かもしれねーのに、さっきの不良か、あの俺が助けた男をやった奴かもしれねーのに…

「く…そ…誰…だ…」

ドサッ…

意識が遠退いて行く…
あぁ…死ぬのかもしんねーな。
俺ってば18で死ぬのかよ、おい。
はぁ…超短けぇんだけど…




ブキャウギュウ!!

「ん……」

…な…何だ?

ブキャウギュギュ…フシュッ!!

何か汚い声が聞こえる。
ヤベェ…超うるせぇ。

俺はゆっくりと目を開ける。

「…は?」

ここ、どこだよ。

俺は白いベッドに寝ていた。
全てが白の部屋…に、派手な色した鳥が一匹。

「ブキャウギュウギュッ!!」

「うおっ…なっ何だよお前!!」

その鳥が俺に気付いたのか、突進してきた。

「ブキュウッ」

不細工な鳴き声だな…

「お目覚めになられましたか」

「あぁ…ってはぁ?!」

何故か声が聞こえた。

「何か?」

「いや…鳥が喋ってるから…」

「あぁ、この鳥の心と自分の心を『trade』(トレード)しただけです。私は人です」

「交換したのか?!」





「はい。私は精神魔法を使いますので。自分は今頃飛び回っているかもしれませんが」

それは嫌だな。
イっちゃってる人だと思われるだろ。

「まぁ、それはいいとして…今すぐ、あなたを校長室に案内します」

「Why?」

「ここは、魔法学校。通称『SPELLSCHOOL』ですから」

す…スペルスクール…?

「何だそれ…」

「ここは、魔界ですから」

「まっ魔界?!」

それ、ファンタジーの世界だろ?!

「はい。実在するのですよ。実在するから、あなたは今ここに居る」

「な…!!俺…が、魔法を使えるから?」

「えぇ。その通りです」




「なっ…何で今頃っ…」

「はい?」

「俺の家は、代々治癒魔法を継いでいく家系だ。だが、俺の祖先に魔界に連れて行かれた奴なんかいねぇぞ」

「は?いや、まさか。そんなことありえません。何らかの理由で魔法を使えるようになった人間は、この魔界に連れて来られます。だからそんな…魔法を受け継いで行くなんてことは……」

「ありえないとは言えんじゃろうなぁ…実際こ奴がそれなのじゃから」

「「?!」」

「校長!!」

「校長??」

突然入って来たこのジジィが?!

「ジジィとは、結構失礼な坊主じゃなぁ…」

「ジジィ?!何てことをっ」

「あん?ジジィじゃねーか」

「このSPELLSCHOOLの…魔界を仕切るかたですよ?!」