「や、大丈夫大丈夫。俺…治癒すっ…から」
「治癒と再生は違うだろ!?皮膚が腐食してるから、オレが手術してやる!!」
ボウン
「まー…ちょ、見ててくれ…治癒魔法、キュア」
シュゥウウ…
皮膚を再生するには、皮膚を新しい物に替える必要がある。
要するに、急速に皮膚の細胞や、内臓の細胞を増やせば良いんだろ?
「おまっ…(そんなの治癒の範囲外のはずなのに…本当に治っていっている…。ケイシは、そのセンスがあるのか…?)」
だいぶ楽になった。
要らなくなった皮膚が、ゆっくり剥がれていく。
患部から、腐った臭いはしなくなった。
中を再生することには成功だ。
流石キュア。
神家家に代々伝わる、最強治癒魔法だ。
だけど…
「わりぃ…ケビン。怪我が…思ったより酷くて…外が塞げねぇ。お前が……塞げっか?」
中の傷で魔力を消耗し過ぎて、外の傷を塞ぐだけの魔力がもうねぇ。
「……当たり前だ。オレは、中も外もやるつもりだったしな。任せろ」
「おう…色々わりぃな、マジ」
俺がニィッと笑うと、
「オレが、これからお前に、その言葉を言う羽目になるだろうがな」
ケビンはふっと眉を下げ、口元を少しあげた。
「ふっぐ…ふえっ…」
泣き声。エアリィか。
心配かけちまったな…。あんとき加勢してくれたときから、多分もう泣きそうだったと思う。
「エア…リィ?」
「ふっ…く…ケイシ!!」
俺が呼んだからか、エアリィは翼をはためかせて飛んで来た。
「泣かせて…わりぃな」
「喋らないでっ…くっ…まだ傷、塞がってないよっ……」
あ、グロかったか?(笑)
「わりぃ、な。でも俺は死なねぇから。泣く…な?」
俺は、血だらけで汚いかと思ったが、左手の人差し指でエアリィの涙を拭う。
「う…〜〜っ、!!むっ…」
あ、汚れなかった。
口を結んで、泣くのを堪えるエアリィは、ちょっと可愛かった。
「ははっ…お前、可愛いな…」
「!!なっなななななななっ////!!」
"な"多っ!!(笑)
怪我して俺もイッちまったかな(笑)
「ったくケイシ、お前プレイボーイ気取りか?行くぞ?」
「ちょっマジかよ…」
姫だっこされてっし俺。
超恥ずかしいし、ダセェんすけど…(泣)
「お前の身体を知れる大いなるチャンスだ。楽しみだ。ククッ」
…こんな奴に任せて、俺は大丈夫なのだろうか…?
一抹の不安を抱いたまま、俺は城の中でケビンに手術された。
〜♪〜♪
…あ?何かまさかの…綺麗な声が聞こえる?
瞼に感じる、柔らかい光。
あぁ俺、ケビンに手術して貰ったんだっけ?
つーことは…生きてんのか。
ま、死ぬことはありえねーがな。
この俺様に限って、んなことはな(笑)
「溢れるゆーめに乗せた心っ…膨らむおーもい…爽やかな…風」
「エア…リィ?」
バッ
「なっ!!ケイシ!!」
やっぱエアリィだ。
優しい声だな…
「目が覚めたの!?大丈夫!?痛くない!?」
ふはっ…めっちゃ勢いよく話してっし(笑)
「俺は、大丈夫。看ててくれたのか?」
「え…//う、うん。ケイシが心配で……」
エアリィは少し頬を紅くして、髪を必死で整えてる。
「サンキューなっ…とっ」
「あっ…もう動けるの!?」
俺はエアリィの心配そうな顔を見ながら、ゆっくりとベッドから出た。
「んー…くはぁ!!眩しい朝だな、おい」
差し込む日差しに、目を細めた。
「うん。私ね?天使の血が強いの。だから狼族みたいに夜行性じゃないから…朝日が好きなんだ」
「ふぅん…つかさっきの歌、オリジナル?」
「うへっ!?き、聞こえてた…///?」
「あぁ。綺麗だなーって思った」
「ほっほんと!?」
めっちゃ嬉しそうだな…
「あぁ。すげー良かった!!」
俺はニィッと笑う。
今までアードリーの、あんまり可愛くない声で起こされてたせいか、今日は清々しいぜ。
「ふふっ…嬉しい…」
頬を染めて恥ずかしそうに笑うエアリィに、何か胸がくすぐったくなった。
「つーか。ケビンは?」
「あっ!!ケビンは、手術の準備してるよ。イーヴルマナク様の容態が安定してるうちに、自分のやれることだけやるっ…て」
流石ケビン。
つーことは、今日イーヴルマナクの種を取らねぇとだな。
「うっし!!」
「!?」
「気合い入れた!!俺に何が出来っか分かんねーけど…やってやる!!」
「…………ケイシ…」
プランとかはねぇ!!
だけど、イーヴルマナクが生きることを諦めない限り、大丈夫…。そんな気がすっから。
「行くぞ、エアリィ」
「うん!!」
俺は朝日を背に受け、ゆっくりとケビンの元へと向かった。
【アシュレイ】
キィッ
「………………ただ、いま…」
バッ
「「「「「……!!」」」」」
「アシュリー!!」
「シュリちゃん!!」
「アシュレイさん!!」
「シュリシュリ…」
「……アシュレイ…」
皆の顔、見れない…
バチンッ!!
「何やってるんですか!!!!」
痛い…
我は、俯いていた顔をあげた。
そこには、
「………マリス…」
涙目の…怒った顔したマリが居た。
「何で一人で行っちゃうんですか!!…どうして…一人で…抱え込むですか……!!」
「…マリリン…あんたが泣いてどうするの…」
ミルハはいつもより大人しく、マリの肩に手を置き、宥めている。
我の…せいだよな。
「ごめん…皆。我が自分勝手に行動して………復讐に、走って……」
「あたしのせいでもあるよ。あたし、シュリシュリが復讐しようとしてるの分かってた。でも、止められなかった」
「ミルハ…」
「…………………俺も、気付いとったのに…何も出来ひんかった」
「ツルギ……」
皆のせいじゃない。
我が突っ走ったせい。
そして…そのせいで、ケイを傷付けてしまった。
「ていうか、その返り血は何ですか?」
「あ………う…ん」
我の服には、大量の………血が付いている。
勿論、ケイのだ。
自分自身には、あまり怪我はない。
「ケイを…………刺してしまった…」
「なっ!!ケイシを!?」
「……どうして契嗣に!?」
リョクとツルギは、驚きで我に詰め寄る。
ミルハとマリは、目を見開いている。
「復讐で……周りが見えなくなった我を………身体を使って止めてくれた…」
「「なっ………はぁ…」」
二人は顔を見合わせ、呆れたようにため息を付き、
「ケイシらしいですね」
「………契嗣らしいな」
フッと微笑した。
その顔を見つめていると、
「シュリ…ちゃん」
怪訝な顔をしたライラが、我を呼んだ。
「………ライ…ラ…」
「…ボクは、許さないから。シュリちゃんのこと」
今まで見たことないくらいの軽蔑の眼差しに、息を飲んだ。