「お前ら、思ったよりわりぃ奴じゃねぇな!あのときケビン助けて良かったよ。間違いじゃなかった」
「…!!…ケイシ…」
ケビンは目を見開いた。
「だけど、アーミー村を襲ったのは…許さん」
「あぁ…あそこか」
俺の言葉に、ケビンは平然とこう言った。
「あそこ、オレが襲ったわけじゃない。アーミー村の奴ら、他の村に襲撃されてたんだ。そこを狙って、オレが潰したことにした。リョクに頼んでな」
「は!?リョクの知り合いなのか!?」
「あぁ。リョクとは、魔界で友人だった。今でも、本当はダメだが…連絡を取っている」
まさかの話だ…
あ、だからリョクの情報が曖昧だったのか!!
「リョクには、少しお前を貸してくれ、とだけ言ってある」
「ふぅん…って俺は物かっ!ゴラァ!!」
「ケビンは言葉足らずなの。怒らないであげて?」
…どっかで見た光景。
「別に怒ってねーよ。俺の短気さは生まれつきだがな」
「ククッ…ケイシお前、エアリィに弱いなぁ」
「んなぁっ!!ちげぇからっ!女に慣れてねぇだけってぁあ!何暴露ってんだ俺!!」
つい口が滑っちまった!!
俺、あんま女と喋ったことねーから、付き合いかたわかんねぇんだよ!!
「ククッ…ふぅん。その顔でそうなのか、クククッ」
「何だその顔ってぇ!!ブサ男ですいませんねぇ!!お前みたいにクマあっても顔が良い、みたいに俺は整わなかったんだよ!!」
「は?クククッ…髪はプリンみたいだけどな。あ、上が金で下が黒だから違うか。金の部分少ねぇな…(笑)だが、顔は美形だろう」
「うんうん。その髪も似合ってる!!目に黄色が混ざってるのも綺麗!!」
「は?何言ってんだ二人して。美形?まさか。刀儀やアシュリーの類じゃねーぞ、俺。つかプリンじゃねぇしっ!!ファッションじゃゴラ」
「何だお前、気付いてないのか?」
「何が?」
「気付いてないの?」
「だから何が?」
「「(ダメだこりゃ…)」」
二人は、契嗣の無自覚さに肩を竦めた。
「何がだよ!!」
何が美形だゴラ!
お前らのがよっぽどだっ!!
し・か・も、何を俺が気付いてねぇってんだ!!
契嗣は、悶々とそれを考え続けた。
そうこうするうちに、城に着いてしまった。
イーヴルマナクが居る城に。
【魔界】
「どういうことですリョクさん!!」
バンッ
激しく机を叩く音が響いた。
「どうもこうもありません。説明した通りです」
「シュリちゃん、落ち着いて」
「落ち着いてなんかいられるか!!ふざけるな!!我達を騙しおって!!」
「シュリシュリ、静かにして」
急に、しんとした空気が伝わった。
ミルハが、いつもとは違う声色でそう言ったからだ。
「……………しゃあない。俺は契嗣と約束した。あいつは必ず戻ってくる。その…イーヴルマナク様とやらが、契嗣を必要としてたんや。しゃあない」
「クッ!!…イーヴルマナク!!」
「アシュレイさん…」
憎悪に満ちたアシュレイの顔に、そこに居る皆が息を飲んだ。
「ケビンが言うには、ギルバーンは自分からイーヴルマナク様のところへ行ったんですよね?」
「…リョク兄さん…うん。そう言ってた」
「嘘だ!!嘘に決まっている!!」
「だからアシュレイ、落ち着けっつってんだろ!!」
「…み、ミルハ…ちゃん?」
「…ごちゃごちゃごちゃごちゃうっせーんだよ。あんたら、目先のことばっかにこだわってんな!!少なくともケイシは、次を見てる。あいつはもっと深いとこ考えてんだ!!過去のことに囚わ「貴様に何が分かる!!ほざくのも大概にしろ!!」
ドカッ
「シュリちゃん!!」
ミルハの言葉にアシュレイは罵声を浴びせ、集まっていたリョクの部屋から出て行った。
「あいつは…根本から取り除かねぇと……復讐の芽が出てる……」
ミルハはボソリと呟いた。
アシュレイの、憎悪に満ちた顔に不安を感じていた。
「み、ミルハちゃん?」
「ん?…あは。やっちったぁ〜!!」
「…………………ミルハ、今のはキレるとこやったか?」
「ツルちゃん、分かってないねぇ〜キレるとこだよ、あそこは!!」
「マルも…アシュレイさんのために、ミルちゃんが言ったことは正確だったと思いますです」
「マリリンもそぉ〜思う〜?」
「はい。アシュレイさん、このままじゃダメな気がしますです」
「…アシュリーは…抱え込んで堕ちて行くタイプですからね」
「シュリちゃん……」
ライラは気が気じゃなかった。
アシュレイが心配で堪らなかった。
【アシュレイ】
絶対…連れ戻す…
イーヴルマナクなどという奴に…好きにはさせん!!
ギルバーンを奪った奴に…またケイまで奪われた。
我の大切な仲間が消えて行くのはもう嫌だ。
我は我は……二人のところに向かう。
そしてこの手で…イーヴルマナクを殺してやる!!
我が…この手で。
アシュレイは無意識に唇を噛み締めて、血が滲んだのを感じた。
アシュレイの心に、闇が侵食してきていた。
何かが始まる…アシュレイに、そんな悪の色が見えた。
END
「さて…どうします?皆さん」
「どうするも何も……」
「………………何か契嗣の役に立てることがあるんやったら、俺は魔界の裏とか言う場所行くえ」
「あたしも。ケイシがやることに…何も間違い無いと思うし、何かあたしらが出来るなら、やらせて」
「マルも…アシストくらいなら…したいです……!!」
「ふふっ…」
「「「?」」」
リョクは三人を見て少し笑った後、
「そう言うと思ってましたよ。私も行きますから…今回は」
真剣な眼差しに変わった。
「………………リョクも行くん?」
「はい。ケビンは私の友人なので。連絡を入れれば迎えてくれるでしょう。禁忌行動になるのですが(笑)」
「そのケビンさんって…どういうかたなんです?」
マリスの言葉に少し詰まったリョクは、しばらくしてゆっくりと口を開いた。
「ケビンは…間違って追放された人です」
「………………どういう意味?」
「関係無い罪を被せられ、彼は追放されてしまいました。私は、何も出来なかった…無実の罪で落とされる彼に…。元々下級の悪鬼と不眠族の出なので、あまり人から好かれるような感じでは無かったのですが、心は優しかった。でも不眠族はレアなので…ハンターに狙われることが多かった。それでも人を怨まなかった。ケビンは、そういう人です」
「でも、アーミー村をやってたじゃない」
「あれは、私の情報操作です。他の村とアーミー村が戦っていたとき、ケビンをそこに向かわせたんです。別れをさせ、怪我させずにケイシ達に会うために」