カミツグ!!〜The six elements.〜


何だよ、俺に言いたいことって……

<…神を継ぐことに囚われるな。ただ真っ直ぐに、自分の力を信じろ。お前ならやれる…そして……――>

「神!!!」

"ただ自分に、正直であれ"

…神……

「………………どうしたんや、契嗣」

刀儀が近くに寄って来た。
幸い皆、俺達を見ていない。

「…………刀儀、わりぃ。頼みがある」

少し小さな声でそう言う、俺。

「……………………悪い話なら聞かへんで」

「…頼むから」

「…………………何や。言うてみぃ。それ次第や」

「…俺、あいつの元へ行く」

「…………あかん。それは許さへん!!」

「行くっつったら行く。助けは要らねぇ。行ったら何かが…分かるかもしんねーだろ?」




「……………契嗣がそないな危険、冒さんでもええやろ!!何でや!!」

「俺は………俺自身が、神家 契嗣である限り、自分が選ぶ道が…一番正しいと思いたいんだよ」

「………………恰好つけんのもいい加減にせぇ…本当、もう…契嗣は…何やねん……」

刀儀は滑らかな髪をぐしゃぐしゃと掻き回して、

「…………分かった。俺が皆を護る。そして…必ず帰って来い。帰れへんなら、俺が行ったるわ」

強い瞳で俺を見つめた。

「…サンキューな、刀儀」

俺はその瞳に頷いて、ケビンのほうを向いた。

「ケビン……行ってやるよ。俺」

「ケイ!!何を言う!!」
「ケイシ!?」
「ケイシさん!?」
「ケーくん……」




「ククッ…威勢が良い男、オレは嫌いじゃない」

ボウン

「止めろケイ!!行くな!!」
「ケイシ!!待ってよっ!!」
「ケイシさん!!」
「「…………」」

「さらばだ。ククッ…」

「じゃあな、皆」

「移動魔法、テレポート」

シュンッ

「ケイ!!ケイ!!嫌だ…嫌……っ、」

「シュリちゃんっ!シュリちゃん!!」

アシュレイは頭を抱え、ぶるぶると震えながら目を見開いている。

「…………アシュレイ…」

「シュリシュリ、しっかりして」

「うっ…くっ…どうして…ケイシさん……」

悲しみが溢れた、別れだった。
荒れ果てた地で、泣き崩れるアシュレイは、皆の涙を誘う。

仕事は、することも無かった。

アーミー村は、人も村も………全滅していた。






【魔界の裏】

シュンッ

「ククッ…着いたぞ。ここが…魔界の裏だ」

魔界とは比べものになんねぇくらいくれぇな…

だいたい…

「魔界の裏ってどういう意味だよ」

「そのままの意味だ。魔界が表なら、ここはその裏だ。光と闇と言えるだろう」

光と闇?
どっちも闇だろ。
すげぇくれぇし、勿論太陽とかいう光は無い。
ただただ暗黒に染まった空が広がるだけ。
だが、魔界とは匂いや雰囲気…暗さが違う。

これは…まるで…

「疑似空間みたいだって言いたいんだろ?ククッ…残念ながら、偽物ではない。どちらも本物だ。ただ、闇が強いだけ。それが…魔界の裏。名前は無い」

ケビンの奴、読み取りやがった…
魔界の裏は、本物なのか…
つか、ケビンって何だ?
黒い羽とか付いてっし…爪も黒くて長いし…目にはクマがあるし…





「お前、どういう人種なんだ?」

「は?魔人だ。…悪鬼の血を引く、不眠族の出だがな」

「魔人なのか…。つか、不眠族?悪鬼??」

わけわかんねぇ言葉ばかりが出て来る。
つか、魔人は魔人なのか、やっぱ。

「魔人は、魔界の住人という意味だから、オレにも当て嵌まる。そして、悪鬼とは、祟りをする妖怪のこと。不眠族は、眠らない者達のことだ」

「お前…その妖怪の血筋で、不眠族なのか?」

「ククッ…あぁ。不眠族だから、ここにクマがある。…おっと、話はここらで終わるか」

「は?俺、まだ聞きたい…」

その後の声は続かなかった。
突然、白と灰の羽が舞ったからだ。

バサッ

「ケビン、遅いよ」

「エアリィか。ククッ…まぁ待て」




「何だ…てめぇは…」

金のくるくるでふわふわな髪に、青の澄んだ瞳。
そして、左右で色が違う白と灰の翼。

「この人が、カミヤ ケイシ?」

「ククッ…そうだ。イーヴルマナク様の…新しい玩具」

玩具…だと?!
この俺が…っ?!

「ふざけんじゃねぇぞっ!!誰が玩具だゴラァ!!!」

「よく喋る玩具だな…ククッ…クククッ」

「ケビン、冗談は止めて」

「分かったよ、エアリィ」

つか、マジ誰だよ、こいつ…

「…私の名は、エアリィ・マクビティー。天使と狼族のハーフです。よろしく」

天使と…狼族?!ハーフ?!

「…禁忌を犯した、天使と狼族の子だ」

「禁忌?ダメなのか?そういうの」

一応敵なのに、俺はケビンにグイグイ近寄った。

「…ケイシには説明ばかりしてる気がするが…ククッまぁ良い。そういうのは、ダメだ」





「ふぅん…。てか、良いんじゃねーか?そんなの、他人が決めた価値観だろ?俺は別に禁忌?でもねーと思うけど」

「…!!」

俺と、目を丸くしているエアリィを交互に見たケビンは、

「ククッ…ケイシは面白い…」

口元に手を宛て、少し屈んで笑った。

「ケイシ…あなたは…魔界の裏を変える人…」

「は?どういう意味だよ、エアリィ」

「…魔界の裏は…ごみの集まる場所」

「ご…み…?」

どういう意味だ?

「あぁ…オレ達ごみが、魔界から落とされる場所だ……」

「禁忌を犯した者が、魔界に悪影響を及ぼすと判断され…ここに集まるの。だから、私達はごみ」

「なっ…!!んなことっ!!意味わかんねぇしっ!!」

何がごみだっ!!
同じ魔人だろ?!
俺はその話を聞いて、わけが分からなくなった。
そして、スフィンクスを思い出した。





あいつ…連れていかれたって言ってたよな。
もしかして……

「スフィンクスって奴が来たか?!」

「あ…?スフィンクス??」

ケビンは、はてなを浮かべてる。

「イーヴルマナク様に、会えば分かるよ」

エアリィは、翼をはためかせながらそう言った。

「…そうか、分かった。イーヴルマナクとやらに会う。魔界と魔界の裏…何が違うのかを知る。神を継ぐ者としてでなく、神家 契嗣として。俺が変えられんなら…変えてやる」

「ククッ…光ばかりだな、お前は」

「は?」

「お前は、たったひとつの眩しい光だ。ケイシ」

「天使の血が入ってるからかな?私、ケイシがすごく暖かく見えるの」

何か…むず痒っ…
そんなこと言われるとは思わなかった。
敵だと思ってた、こいつらに。





でも、何か理由があるっぽいし…俺が必要だったこととかが。
イーヴルマナクに会えば、きっと何か分かる。
ギルとかいう奴のことも。

「暖かくなんかねーよ。つか、俺がそんな奴とか気色わりぃだろ」

「そんなことない。ケイシは、優しい人」

……何なんだよ、エアリィ…
ちょっとマジで本気みたいだ…

「ククックククッ…エアリィ、お前…ケイシが好きなのか?」

「うん!!」

「んなぁっ!!何言ってやがんだドアホウ!!///」

「クククッ…顔がタコだぞ…ククッ」

お前は刀儀かっ!!
無性にそれが言いたくなった。
だが、

「お前は、タコの墨な」

「ぶふー!!」

黒いし、刀儀みたいにイカらしく白くねぇし…墨だろ、うん。

「エアリィ…笑うな」

「だって!!ぶくくっ……」

エアリィは、ケビンを見てゲラゲラ笑ってた。