「俺達も…ことを煩わしくしてしまった。悪い」
俺達を襲ってきた海賊、サク…サクスン!!サクスンだっ!!後、マキにカヌイが頭を下げる。
あぁ…ブラウンズだなこりゃ。
あれ…?スフィンクスは?
「あーあーいいっていいって〜俺、気にしてねぇし。つかスフィンクスは?」
俺は頭をかきながら、サクスン達に向かってこう言った。
「お前は……つくづくムカつく男だな…ゴラ。スフィンクスは重罪者なんだ。もともと。だから連れていかれた」
あ?謝られた後、眉ピクピクさせて…けなされてんだけど…俺。
しかもこいつらの怪我治したの、俺なんだけど…
つか、スフィンクスって重罪者だったのか…?
あの片言で!?
まさかの話だぜ…うん。
「これにて…一件落着です!!」
「ん〜…とっ…じゃ、帰ろぉ〜あたし、爪が割れちゃってぇ…ネイルサロン行きたいんだけどぉ…」
このチーム、マイペースな奴多過ぎだな…おい。
「ネイルサロンなら…この町にあります。王宮の復旧も、皆様のおかげですぐ終わりましたので…もう少し、滞在されては?」
タウの言葉に、
「あっあたしぃ…マジもう少し見たいとこあるんだ〜」
「マルもっ!!服まだ見たいです!!」
「……そう言えば…我は何も見ていない…」
次々とそう言う女達。
あっ…そういや俺も…
「俺、刀儀と通貨引換所に行く約束してたなぁ…」
「……………あぁ…じゃあこの機会に行こか?」
「おう、頼むわ」
「……ぼっボクはっ…あ。ケイシの上着に鼻水付けちゃったから…洗濯を…」
ぅおいっ!!
あれだけ付けんなっつったのに!!
まぁ…洗濯してくれんならいいけど。
「そう言われると…ケイが突然タンクトップ姿になったのは気になっていた」
「(あっ…ボクが泣いてたこと…バレちゃう!!)」
「…あぁ…ライラが寒いって言うからさ、潮風が」
「(苦し紛れ過ぎるよっケイシ!!)」
「…そうか。風邪でも引いたんじゃないか?潮風が寒いだなんて…」
「(…………シュリちゃんだもんね……)だ、大丈夫大丈夫。風邪じゃないから!!」
ほっとするライラであった。
「わたくしも町に行きたいわ。マキ、連れて行きなさいな」
「ひゃっほう!!オイラ、カヌイちゃんのためなら何処へでも連れてくよ〜!!」
「てめーらうるせぇ。マジ逝けば?」
………変わってねぇなぁ…こいつらは。
「あ、そこのキャバ嬢?みたいな人ぉ〜あたしと、ネイルサロン行くぅ?」
「あら、わたくしがキャバ嬢?あなたがキャバ嬢じゃなくて?」
「いやぁ〜あたしはぁ…ギャルの部類だと思うしぃ(笑)てか、行くの?行かないの?」
「……そうですわね。行きますわ。わたくしも、爪の手入れを随分していなかったから…」
つい昨日爪めっちゃ使って戦ってたよな、こいつ。
「えぇ…オイラは〜?」
「マキはサクスンと居なさいな。わたくし、この女とネイルサロンに行きますわ。あなたはやっぱり必要無くてよ」
「…ガーン…」
あぁ…言葉の暴力…
「あたしぃ〜ミルハ。あなたは?」
「わたくしはカヌイですわ。ところで…――」
二人は話しながら町へ行ってしまった。
「アシュレイさん!!マルと一緒に行きますです!!」
「あぁ、そうだな。我も服や装飾品が欲しかったところだ。因みに…――」
そしてマリスとアシュリーも行ってしまった。
「んじゃ、俺らも行くか」
「……………せやな」
「ジュビエール、ジェイビーナ…また今度会おう」
「あぁ…ところで、お前の名は?」
「神家 契嗣」
「カミヤ ケイシ……そうか。ケイシ、ありがとう」
「ケイシ様、ありがとうございました」
「おう。元気でな!!」
「…………さいなら」
笑顔の二人を暫し見て、俺と刀儀は町へと歩き出した。
ふと見上げた空は、今日に相応しい…綺麗なpale blueだった。
あれから暫くして、俺は…
ガキィンガキィン!!
「手加減しらねぇのかてめぇはっ!!」
「………………手加減?そんなん契嗣にするわけないやん」
刀儀と毎日のように戦っていた。
勿論、修行だけど。
「ちょっとー!!二人とも、修行ばっかしてないで、仕事行くよぉ〜?」
突然ミルハが乱入してきた。
「うるせぇミルハ!!俺は今、刀儀と戦ってんだよ」
「………………仕事のほうが大事やねんけどな」
バキィッ
「「いってぇ!!」」
「お前達…いい加減にしろ。仕事に行くぞ。今回も、この二チームでやるそうだ」
くっそーアシュリーの奴!!
手加減無しかよコンチクショー!!
「……………俺も何でやられるんや…?」
刀儀は殴られた頭をさすりながら、ボソボソ文句を言っていた。
チッ…次の仕事は何なんだ…?
俺は、皆の後をゆっくり追った。
「―――…サガ…シタゾ……カミヲ…ツグモノヨ…」
「なっ!!」
かすかに聞こえたそんな声に、俺は辺りを見回した。
「何だ…今の…」
"探したぞ、神を継ぐ者よ"だと?
嫌な予感がしてならない。
何か、始まる…そんな気がする。
契嗣は自分を引き締め、仲間の後を急いで詰めた。
「………――ククッ、カミヤ…ケイシ…ヤットミツケタ。オマエノチカラ……ククククッ…!!」
何かが、すぐそこまで近付いて来ていた。
契嗣達の影に、何かが。
「…――ケ…ケイ!!ケイシ!!」
「…!!」
あ、アシュリーか…
「なっなんだよ」
「お前、我が呼んでいるというのに…返事もせんのでな」
「わりぃ…」
さっきのことを考えていたせいか、周りが見えてなかったみたいだ。
「大丈夫か?ケイ」
俺のそんな反応に少し疑念を持ったのか、アシュリーは眉を下げて俺を見た。
「…ん。わりぃな。マジ、大丈夫だから」
俺は、そうとだけ言い、ライラと刀儀に向き直した。
残されたアシュレイは、
「……(何か…おかしい…どうしたんだ?ケイの奴…)」
契嗣の様子をまだ気にしていた。
「今回の仕事は?」
俺は向き直したついでに、二人にそう尋ねた。
「今回は緊急招集だよ。アーミー村が襲われたみたい。それで…ボク達が救助しに行くんだって」
「ふぅん…アーミー村ねぇ…誰に襲われたんだ?」
「………………リョクの話だと…テロリストらしいで。よう分からへんみたいやけど」
テロリスト……
「何でアーミー村を襲ったんだ??」
「…それもよく分からないみたい。情報収集に優れてるリョク兄さんが、分からないんだから…。とりあえず、向こうに行けば、何か分かるよ!!」
リョクが…?
急に、身の毛立つ感覚が身体中に走った。
何故か分からないが、無意識に、そうなった。
ライラの笑顔に…少し落ち着いた。
「ここですね」
マリスが呟いたそこは……
「焼野原ってところだな…」
戦場だった。
「アーミー村ってぇ…村だからかしんないけど、軍隊とか作ってて〜ここらで一番強い村って言われてたのにぃ…この様子じゃ…ヤバいかもねぇ」
ミルハが頷きながら呟く。
ここらの村で一番強いところがこの有様。
大丈夫なのかよ…この六人だけで。
人手足りなくねぇか?!
「案ずるな、ケイ。我らは大丈夫。そうだろう?」
俺の様子にいち早く気付いたアシュリーが、得意げに笑いながら俺の肩に手を置いてきた。
「……わーってるよ」
俺達なら…きっと大丈夫だ。
この先…何があっても。
きっと……。