こんな時に考えるのは、レンタル家族のことだった。


もしも、家族がレンタルできたら、お父さんは誰にしようかな。 お母さんは誰にしよう?



暗闇の中で、あたしは、好きな芸能人を思い浮かべて、温かな家庭を想像した。



あたしにとっては、理想の親も、理想の家族も、そんなものは、ドラマやアニメの世界にしか存在しない。



友達の家に食事に誘われた時、食卓を囲んで、みんなで、わいわいご飯を食べたことがある。



あたしは、楽しくて、嬉しくて、友達に「楽しいね。ご飯のときに、家族の会話があるっていいね」って言った時



『え? それって普通じゃん。家族だもん』って、言われた。




「ウチは、ご飯の時も話しないよ? 話したら、うるさいって怒られちゃうし、夜8時になったら寝ないとお父さんに、殴られるし」



って、言ったら



『変な家だね。家族だったら、お話したり、お出かけしたり、楽しいこといっぱいだよ? 遅くまで起きてても、怒られたとしても、殴られたりはしないよー。
変な家族』



って、笑われたときは、情けないやら、恥ずかしいやらで、あたしは、うつむいた。



ショックだった。



あ、ウチって普通じゃないんだ。


変な家族なんだ。自分の家のことを話すと人から、笑われちゃうんだって、初めて気づいた。