だけど



毎週火曜日だけは、特別だった。


夜8時から放送される、積木くずしというドラマがあったから。



芸能人の父親が、非行に走った娘を描いたストーリーは、実話のドラマだった。



視聴率は、50パーセント。出版された本は、1年で、300万部売れた大ベストセラー。テレビドラマ。映画にもなった。



父は、その積木くずしのドラマが好きだった。




積木くずしを見ている時だけは、殴られる心配もないし、家の中は平和で、口数の少ない父をよそに、あたしは、母と話ができた。



そして、放送が終わるといつも母は、あたしに言った。



『晴美は、あんな親不孝の不良娘になったら、あかんで? 不良なんかにならんといてな?』




親は、子の気持ちなんて分からない。不良には、不良になる理由がある。


何もなくて、
道をそれる人なんかいない。




そう心の中で、思いながら
「ならないよ」って
あたしは答えた。