「わかってらぁ。だから動ける奴だけ連れて行くんだ。」
「しっかし、ここまでへばるとはねぇ。」
体力のない奴ばかりだな。とぼそりと杏里が呟く。
杏里が束ねている小隊の者たちも大半がダウンしており動けない状態だ。
「姐さんの体力がありすぎなんです…。」
杏里の隊の一人が腹の痛みに耐えながら答えた。
「ほんとに姐さん、女ですか?」
「あ、馬鹿…。」
青ざめた顔で永倉が杏里をちらりと見やった。
ドスッ!
杏里の刀が鈍い音を立て、さっきの隊士達の顔横に刺さった。
「今なんて言った?聞き捨てならないこと聞こえたんだけど。空耳かなぁ?」
杏里の顔はにこやかな笑顔だが後ろには般若が浮かんでいた。
隊士の胸ぐらをつかみ殴る寸前で沖田が止める。
「杏里、落ち着いて。可哀想。」
「す、すいませんでしたっ。」
怯え泣く隊士達に永倉が慰める。
ぎゅっと後ろから杏里を抱きしめる沖田。
「わかったから。放して総司。暑い、苦しい。」
「えー。恋人同士なのに?」
「ほぉー。いつの間にそんな仲になってたんだ?」
原田がにやりと笑い二人の経緯を聞こうとしていた。
そう、沖田と杏里はつい数日前に恋人同士になったのだった。
真剣な話をしているというのにふざけてる面子をみて土方の怒りが静かに爆発する。