鍔競り合い(つばぜ)になっても両者者一歩も譲らず。
ただ時間だけが過ぎていく。
試合を始めて三十分がたつが二人の攻防戦が続く。


へぇ、やるじゃん。これは本気出さないとヤバいかな。


「何してる。」


道場の扉が開かれ浅葱色の隊服を身に纏(まと)った男が入ってきた。


「あ、一。」
「斎藤さんおかえりー。」


沖田や平助が男の名を呼ぶ。
【斎藤一】、沖田と並ぶ剣客(けんきゃく)で新撰組内で一、二を争う。


「彼女は…?」
「あぁ、総司が連れてきて今土方さんと入隊かけて一本勝負。かれこれ三十分だぜ。」
「彼女の腕は俺や一と同じ。もしくはそれ以上。」


沖田が打ち合っている二人を見ながら説明する。
斎藤はじっと杏里を観察する。


「はぁぁぁっ!!」


ダンッと杏里が踏み込み、突きを仕掛け土方の喉元へと突き立てる。


「くっ………。」


沈黙が流れる。平助や永倉、原田は驚愕(きょうがく)した。


「勝負あり。土方さんの負けですよ。」
「彼女の入隊、認めますよね?土方さん。」


約束ですもんねぇ。と付け足して沖田が言った。
「ちっ…。しょうがねぇ、入隊を認めてやるよ。」


ものすごく嫌な顔をしながら渋々言う土方。


わいわいしていると、斎藤と沖田がやってきた。


「あら、沖田さん。」
「杏里、そろそろその口調やめなよ。気持ち悪いからさ。」
「るせぇ。まぁいいっか、さすがに疲れた。」
「お前は間者もこなせそうだな。」


すらりとした体躯(たいく)の男が口を開く。


「あぁ、紹介するよ。彼は「斎藤一。だろ?」
「そうだ。だがなんで俺の名前を知っている。」
「それは秘密だな。すぐにでもわかるよ。」


ひらひらと手を振って道場を去る杏里。それを見送る沖田達。


「つかめん奴…。」


斎藤はそう言って杏里の後に続き道場を去った。


「じゃぁ、俺らも戻るか。」


原田が手を叩いて合図する。
そして残りのメンバーが各自散って行く。


やっぱり私の事話さないとな……
そういや土方さんの部屋ってどこだっけ。